労働災害の相談事例

うつ病で私病休職期間満了後退職した労働者から労災申請と損害賠償等を求められた事例

ご相談から解決までの具体的なイメージ(メンタル系)

1. 問題発生:復職拒否、内容証明郵便到達

コンサルタント会社C社に勤務していた社員Dは、うつ病で休職し、1年間の休職期間満了直前に主治医の診断書をC社に出して復職を希望した。C社は、主治医の診断書では復職の可否を判断できないので、産業医の診断を受けるようDに指示したが、Dは、就業規則の根拠がないことを理由に産業医の診断を受けなかった。C社はDの復職を認めず、Dは休職期間満了により退職した。

退職してから2週間後、Dが元の上司のE部長に対し、Dの休職の原因は労働災害の疑いがあるから労災申請手続をして欲しいと求めてきたが、E部長は、Dの休職は私病によるもので健康保険の傷病手当金も受給していたから、労災申請手続に協力はできないと拒否した。

その後、Dの代理人と称する弁護士XからC社に対し、Dのうつ病発症はC社での長時間労働による労働災害であるから労災申請手続をすること、労働災害及び不当に労災申請手続を拒否したことに対する慰謝料等の損害賠償の支払、Dは労働災害で休業中に解雇されたから不当解雇であり解雇を撤回すること、を求める内容証明郵便がC社に送付された。

2. 相談:事実の確認、対応方針の決定

E部長は、弁護士から内容証明が届いたことから、会社の担当者限りで対応することは難しいと考え、法律事務所を訪れ、弁護士Yと面談した。

弁護士Yは、E部長の話を聞き、傷病手当金を受給していた場合でも、事後の精算の問題はあるが、労災保険給付が認められる場合もあること、C社はDから労災保険給付を受けるために必要な証明を求められたときはすみやかに証明しなければならないが、C社として労働災害でないと考えるのであれば、意見を申し述べる機会はあること、本件の解雇の問題は、客観的に復職可能な状態であれば復職を認めるべきであるし、復職不可能な状態でも労働災害による休業中となると解雇は認められない可能性があることを説明した。

また、弁護士Yが、Dの労働時間や業務内容、Dのうつ病発症の経緯などの背景事情の事実確認を行ったところ、Dは過去にうつ病を発症したことはなく、うつ病発症前の長時間労働については客観的資料が少なく確認できなかったが、業務上のトラブル対応が重なった時期があったことが判明した。そこで、弁護士Yは、長時間労働がないとすると労働災害となる可能性は低そうにも思われるが、トラブル対応に関わる心理的負荷の程度と業務以外の心理的負荷のかかる出来事の有無によっては、労働災害と判断される可能性も否定できないと説明した。

そして、弁護士YはE部長と協議し、労災申請手続には協力し、それ以外の請求については、現時点でDの請求をそのまま受けることはできないが、労災保険給付の結果次第では、必要な対応をとるという方針で臨むこととした。

3. 交渉・関係機関対応:争点の確認及び調整

弁護士Yは、弁護士Xに、労災申請手続には協力するが、Dには長時間労働の事実はなく、C社としては労働災害ではないと考えており、労働災害であることを前提とした損害賠償や解雇の撤回はできないこと、但し、復職については、産業医の診断を受けてもらえれば、その診断結果を元に復職可否を判断すると説明した。弁護士Xは、産業医の診断を受けることを拒否し、労災申請手続を先に進めることを求めたことから、労災申請手続を行うこととなった。

弁護士Yは、C社が労働基準監督署に提出する予定の書類の内容を事前に確認し、事実関係が正確に記載されているか、誤解を招く可能性のある表現はないか、説明すべき事項が分かりやすく記載されているかという観点からアドバイスを行った。また、弁護士Yは、今後想定される関係者の事情聴取などの手続についても予め説明し、C社では、弁護士Yのアドバイスに従い、そのような手続への協力に支障が出ないよう、関係者のスケジュール調整などの段取りを整えた。

4. 解決:決定

労働基準監督署長は、Dのうつ病発症が労働災害ではないと決定し、弁護士Xは、当該決定を不服として審査請求・再審査請求手続まで行ったものの、結論は変わらず、それ以上の手続をすすめることなく終了した。弁護士XからもDからも、その後、C社に対し、損害賠償請求や復職を求める請求等はされなかった。

5. 事後対応:社内体制の整備

C社では、本件の解決に至るまでに課題となった問題点について、弁護士Yのアドバイスを受けながら、社内体制を整備した。具体的には、復職の可否の判断の手続を円滑にすすめるための手続規程の整備、労災保険給付申請手続の理解促進のための説明資料作成、労働時間管理体制・安全衛生規程の見直し、メンタルヘルスに関わる労働災害についての意識付けを強く持つための管理職研修などを実施した。

その結果、C社では、管理職を含む社員全体での労働時間管理や安全衛生に対する意識が高まり、本件の問題発生前と比較し、社員全体の平均残業時間も減少し、これまで頻繁に発生していた精神疾患による休職者も減少した。