よくあるご質問

社員の精神疾患への対応

当社の社員は、最近、遅刻を繰り返したり、勤務時間中に奇声を発したりするなど、何らかの精神疾患と思われる状況が見うけられます。
当社の産業医の精神科医に受診して欲しいと考えていますが、法定健康診断ではない場合には、受診を命令することはできないのでしょうか。

受診を命令できる場合もあります。
労働安全衛生法が事業者に実施を義務付けている法定健康診断(労働安全衛生法66条1項乃至3項)について、同法は労働者に受診義務を課しています(労働安全衛生法66条5項。ただし、同項但書は、労働者が事業者の指定する医師とは別の医師により健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出することも認めています)。

詳しい解説

法定健康診断ではない場合でも、就業規則等において、労働者の健康診断受診義務を定めている場合には、その規定の内容が合理的である限り、拘束力を有し、労働者に受診義務が認められる場合(最一小判昭61.3.13)があります。
また、就業規則等の定めがない場合でも、合理的な理由等がある場合には、受診を命ずることが認められる場合(東京高判昭61.11.13、東京地判平3.3.22)もあります。

したがって、受診を命令することができるかどうかの検討に際しては、就業規則等の定めがあるかどうか、合理的な理由があるかどうかというような個別具体的な事情がポイントになります。
但し、本件のような精神疾患かどうかというような情報は、一般的に労働者にとって他人に知られたくない情報と解されていることもあり、最終的に受診を命ずるとしても、命令に至るまでの実務的な対応にも工夫が必要と考えられます。

このような問題は、受診命令の可否の問題に止まらず、命令に従わなかった場合の懲戒処分や、業務上の支障を理由とした解雇、病状が悪化した場合の使用者の安全配慮義務違反等の問題に発展していく可能性がありますので、出来る限り早い段階から専門家に相談の上、慎重な対応をする必要があるといえます。
また、予防法務という観点からも、このような事態に直面した場合にスムーズな対応ができるよう、予め想定しうる状況を視野に入れながら、就業規則や健康管理に関する規定等を整備しておくことも有用です。