地位保全または賃金仮払いの仮処分

労働者の解雇に関する紛争解決手続として、近年は、労働審判手続が用いられる場合が多く、裁判所による暫定的な処置となる地位保全(労働者が使用者に対して労働契約上の地位を有することを仮に定める)や賃金仮払(労働者が使用者に対して賃金相当分を仮に支払う)の申立ては、話合い解決の余地がなく現に生活に困っているなど切迫しているような場合以外には、それ程多くはないように思われます。
しかしながら、この手続は、裁判所からの呼出状の送付から約1~2週間程度後を目途に期日が指定されるなど、会社側にとっては、労働審判以上に厳しいスケジュールとなりますので、早急に弁護士と相談し、効率よく準備をすすめる必要があります。

<地位保全または賃金仮払いの仮処分の解決までの流れ>

① 申立て

労働者が裁判所に、申立書と証拠書類を提出

  • ・被保全債権(労働契約に基づく従業員たる地位など)の疎明
  • ・保全の必要性(著しい損害又は急迫の危険が生ずるおそれを避けるため暫定的な措置をとる必要性)の疎明
② 呼出・準備

審尋期日指定後、裁判所より呼出状が送付され、会社側で準備開始

  • ・裁判所は、1~2週間後を目途に審尋期日を指定
  • ・会社側で呼出状と一緒に送付された申立書や証拠書類の内容を確認し、弁護士と打合せを行い答弁書の準備を開始
③ 答弁書提出

会社側が裁判所に、答弁書と証拠書類を提出

  • ・会社側は第1回審尋期日前までに答弁書提出
  • ・被保全権利が存在しないこと、保全の必要性がないことを反論、反証
④ 審尋

裁判所で労働者側と会社側の双方での主張のやりとりを行う

  • ・相手の主張に反論しながら、証拠書類や陳述書を提出
  • ・10日から2週間に1回程度のペースで数回行われる
⑥ 和解

裁判所が双方の主張を整理して和解を提案

  • ・双方が合意に至った場合、裁判上の和解が成立
⑦ 決定

和解が成立しない場合、裁判所が認容か却下を決定

  • ・裁判所は通常訴訟の判決にあたる決定を出す
  • ・決定は、原則として、申立てを認める(認容)、または認めない(却下)

1. 申立て

仮の地位を定める仮処分は、金銭債権以外の権利を保全するために、民事保全法に基づき裁判所が決定する暫定的な処置です。

たとえば、解雇された労働者が、解雇が無効であると主張してその効力を争う場合に、①労働者たる債権者が使用者たる債務者に対して、①地位保全(労働者が使用者に対して雇用契約上の地位を有することを仮に定めるとの裁判所の判断を求める手続)と②賃金仮払い(労働者が使用者に対して賃金相当分を仮に支払えとの裁判所の判断を求める手続)のための仮処分の決定を求めてくる場合があります。

仮処分の申立てにおいては、申立てをする側の労働者が、被保全権利の存在(労働契約に基づく従業員たる地位など)と保全の必要性(労働者に著しい損害又は急迫の危険が生ずるおそれを避けるため暫定的な措置をとる必要)について、具体的な資料を下に、疎明しなければなりません。

2. 呼出・準備

これに対して、申立てを受けた会社側は、労働者の主張に対する反論を答弁書に記載して提出します。
具体的には、被保全権利が存在しないこと(例えば、解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当であり有効であること等)や、保全の必要性がないこと(例えば、労働者が賃金以外の収入を得ていること等)を反論・反証します。

仮処分においては、裁判所から呼出状が送付されてから1週間ないし2週間後を目途に審尋期日が指定され、その前に会社側の主張をまとめる必要があるため、早急に弁護士らと打合せを行い、労働者側の主張とそれに対する会社側の反論、会社側の主張を裏付ける資料の収集を効率よく行う必要があります。

3. 答弁書提出

会社側は、第一回審尋期日前までに、労働者の主張に対する反論を記載した答弁書を裁判所に提出します。

4. 審尋

本件のような仮の地位を定める仮処分は、発令されると会社側にとって打撃が大きいので、原則として会社側の立ち会うことができる審尋期日または口頭弁論期日を経なければ発令できず(民事保全法23条4項)、通常は、審尋が実施されます。
この手続の中でも、裁判官が双方の主張を整理して、和解についての検討がなされることもあります。

5. 和解

双方が合意に至った場合、裁判上の和解が成立します。

6. 決定

和解が成立しない場合、裁判所は、原則として、申立てを認める(認容)か、認めない(却下)か、決定で行います。

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